保険会社におけるコールセンター運営の課題、そして未来とは?

1月22日に開催された「コンタクトセンターの未来を考えるセミナー2020」に参加してきました。

 

このセミナーは、月刊コールセンタージャパン編集部が主催するセミナーで、当日はパネリストとして明治安田生命保険のコールセンターのマネジャーも登壇。

貴重なお話をうかがえましたので、今回は、その簡単なレポートも交えながら紹介したいと思います。

 

そもそも保険業界におけるコールセンター業界が抱えている問題とはどのようなものでしょうか?

保険商品は、その特性上、大きなクレームへと発展しがちです。

では、保険会社の経営陣は、それをどのように捉えながらコールセンター運営、保険会社経営に活かしているのでしょうか?

 

…こんな風に、たまにはコールセンター目線で保険業界を見ると、また違った視点でお客様や経営課題を理解できるもの。

今回は、保険業界で働いている方に向けて、保険業界におけるコールセンターの課題や取り組みの一例を紹介したいと思います!

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保険会社におけるコールセンターの課題とは?

そもそも保険会社におけるコールセンターの課題とは、どのようなものでしょうか?

その一例を挙げると…
●電話繋がらない(人材が確保できない)
●オペレーターが保険商品のこと全然理解してない
●均質であるべきオペレーターの質がバラバラ
●オペレーターのアドバイスが頼りない
…保険会社のコールセンターといっても、その業務は様々ですが、これらはどれも保険会社が直面している課題です。

例えば生命保険は“人生で2番目に高い買い物”とも言われるほどの商品ですので、お客様や代理店にとっては、たまたま電話に出たオペレーターに間違った説明や案内をされればひとたまりもありません。

また、自動車事故の場合でも、いざ事故が発生して事故現場から24時間対応のコールセンターに電話をしても電話が繋がらなかったり、的確なアドバイスがもらえなかったり
…これは、保険契約をしているお客様にとっても、保険を販売している代理店さんにとっても、想像するだけで恐ろしい話です。

しかしながら、こういった問題が、日々、保険会社のコールセンターで実際に起きているのが現状です。

今回私が参加した「コンタクトセンターの未来を考えるセミナー2020」は、そのようなコールセンター運営における課題を深堀りするというよりは、コールセンターで収集したお客様の声をどう業務改善に活かすか?という点が主なテーマでした。

では、具体的にセミナーの内容の一部を紹介していきましょう。

コンタクトセンターの未来を考えるセミナー2020/明治安田生命の例

2020年1月22日に開催された「コンタクトセンターの未来を考えるセミナー2020」では、様々な業界・企業のコンタクトセンター運営に関わる担当者が参加していました。

ちなみに“コンタクトセンター”とは、コールセンターの最近の呼び方です。

コールセンターもお客様との重要な接点を果たすものとして、最近では、そのような呼ばれ方がされているようですが、まぁ普通のコールセンターという認識で間違いはありません。

 

この日、保険業界では、唯一、明治安田生命の担当者がパネリストとして登壇。「明治安田生命保険 お客さまの声統括部 コミュニケーションセンターコール業務開発グループ」のグループマネジャー太田氏が、コールセンター運営の取り組みについて紹介。他にも異業種のベネッセ、フィデリティ証券などのコールセンター担当者もパネリストとして参加し、意見を交換していました。

ご存知の通り、明治安田生命は、創業120年を越えるもっとも歴史ある生命保険会社です。
保有している契約は1228万件、約650万人のお客様を抱える巨大企業。
明治安田生命のコールセンターには、1日に約2千件、年間で50万件の入電があるそうです。

クレーム来すぎじゃね?

…まぁ、その真相はさておき。
太田氏によると、明治安田生命では、トップダウンでお客様の声を活かす取り組みをしているそうです。
また、お客様からの声だけではなく、社員からも声を集め、太田氏がマネジャーを務めるお客様の声統括部が情報を一元管理し、業務改善を推進しているとのこと。

 

さらに、声を挙げない社員・組織に対してはペナルティなども課す…といった取り組みをしてきたそうです。

これを聞いた他業界のパネリストたちは、

「(お客様からの声に対する取り組みを)トップダウンで実行・対策できるなんて、うらやましい」

という旨の発言。

 

これは、保険業界の人ならちょっと皮肉にも聞こえてしまいますよね。
太田氏も「明治安田生命は、2005年、お恥ずかしながら二度の行政処分となり…」と切り出し、保険業界における保険金不払い・不適切な募集活動の問題を挙げ、お客様の声に対して真摯に向き合わざるを得ない保険業界の現状を伝えていました。

他業界のコンタクトセンターでは、「経営陣が、お客様の声に対して興味・関心を持ってくれない」という課題も多くあるようで、幸か不幸か、その点においては保険業界はまだ恵まれているのかもしれません。

いずれにしても、やはり保険業界におけるコンプライアンスの問題はとても根深く、これは他の業界とは少し違う質・レベルのもの…とあらためて実感しました。

明治安田生命の“お客様の声”を活かした改善事例

「コンタクトセンターの未来を考えるセミナー2020」では、“お客様の声”を活かした改善事例も紹介していました。

明治安田生命保険お客さまの声統括部の太田氏が紹介していたのは、「ご高齢(65歳以上)の方向け専用の電話窓口」を設置したという事例。

明治安田生命保険が抱えるお客様は、65歳以上が4割を占めるそうです。
そのため「音声案内が分かりにくい」「〇〇の方は1番、〇〇の方は2番を押してください…このようなナビゲーション(IVRと言います)が分かりずらい」といった声が多くあったそうです。

そこで、明治安田生命では、ご高齢の方専用の窓口を設置。
この専用窓口では、上記で紹介したIVRのナビゲーションを無くし、高齢者の立場に立ってコミュニケーションがとれるように特別な研修を受けたオペレーターが対応をするという方式。
また、この窓口を対応するオペレーターの育成には、社内で資格を設け、給与もプラスオンするなどの工夫をしているとのこと。

この取り組み例は、最近のトレンドである「テクノロジーの活用」と逆行しており、他業界のパネリストや参加者も興味深く聞いていた印象でした。

保険業界におけるコールセンターの未来とは?

さて、今回は、保険業界におけるコールセンターの課題、そして明治安田生命のコールセンターにおける取り組み例を紹介しました。

明治安田生命の“高齢者向けの窓口設置”は例外ですが、保険業界におけるコンタクトセンター運営は、テクノロジーの活用によって大きく変わりつつあるのが現状です。

その一例を紹介しましょう。

事例(1)チャットボットによる対応自動化

すでに、一部の保険会社では、商品や保険手続きに関する問い合わせの対応の一部をロボット(=「チャットボット」)が行っています。

「チャットボット」とは、AIを活用した自動対話プログラムのこと。
チャットは想像以上にレスポンスが早く、メッセージを入力したら即レスで欲しい回答が返ってきます。
チャット記録は、webで履歴が残るので、後で「言った、言わない」の話になるケースも減るでしょう。

しかも、チャットであれば、質問に対してさらに詳しい情報が掲載したURLリンクを紹介してくれて、一瞬にして電話だけでは聞くことができなかった情報も手に入ります。

さらに、時間を問わず、しかも電話を繋がるのを待つこともないので、保険会社にとっても、顧客にとっても双方に大きなメリットとなります。

事例(2)事故受付センター

24時間営業の事故受付センターは、技術の革新によってオペレーターが不要になるとされています。

一般的な事故連絡であれば、スマートフォンなどを活用したweb入力でに完結することができます。
webで簡単に保険金の請求ができれば、”電話がつながらない!”といったストレスもなくなるのです。

今後は、事故現場で不安になっている状況のお客様に対して、高度なレベルで安心や適切なアドバイスを提供できる“人間ならでは強み”をしっかりと兼ね備えたオペレーターのみが必要とされます。

こういったテクノロジーの台頭からも、ゆくゆくは、「コールセンター」「カスタマ―センター」がなってしまう可能性があるとも指摘されています。
完全消滅と言わないまでも、少なくとも人員削減は必至とされています。

一方で、テクノロジーの進化により、コールセンターの新たな可能性を感じるニュースもあります。

事例(3)自動運転の事故対応サービス拠点設置

損保ジャパンは、2018年9月、自動運転の自動車が事故を起こした際の対応サービスについて、研究をする拠点を東京都中野区に新設しました。

政府が2020年までに目指している自動運転サービスを見越して、事故時には、自動車の位置情報を通信回線で把握し、遠隔で自動車を運転したり、オペレーターが事故対応を行い支援するサービスを提供することを計画していることを発表しました。

保険業界のコールセンター運営に必要とされるもの

保険業界におけるコールセンター業務は、決して“楽しい”という仕事ではありません。

お客様と直接接する機会がないので、保険代理店・営業担当者・保険金支払担当者のように“やりがい”、“貢献”を実感しずらい面があるのも事実です。

また、テクノロジーの進化と人口減少により、おのずと人員は削減される一方、テクノロジーを上手に扱うことができる人材の確保・育成も必須です。

そして、保険会社が抱えてきた膨大な顧客に対して、どれだけエネルギーを割いていけるか?効率的な誘導ができるか?といった点も求められます。

保険業界におけるコールセンター運営に必要とされるのは、これらすべて。

これらの課題に対して、果敢に取り組むことができるリーダーや仲間たち … あなたの組織にはどれだけいるでしょうか?